T-pot

ティーポット
 重箱を日常生活に <日本経済新聞「楽住快居」(05.12.17)より抜粋>
.........温かくて上質 品の良さ醸す.........................................................................................................................................................

年に一度、正月の食卓を飾る重箱。
漆のぬくもり、工芸デザインの美しさ、道具としての機能性の高さに気づいたら、重箱をふだんの暮らしに取り入れてみよう。自由な発想で一つの器で様々な用途に使えるのが重箱の持ち味だ。

見た目より軽く、壊れにくいうえ、持ち運びが便利であるのが重箱の特徴。だが、「日常的に使う人が増えつつあるのはほかにも理由がある」と語るのは、伝統工芸品のプロデュースなどを手掛けるティーポット代表の御手洗照子さん。

「漆の重箱はあたたかみがあり、食卓に品の良さを醸し出す」という。日常生活でも上質なカジュアルへの志向が強まっており、漆はその最たるものとして見直されているのだそうだ。

重箱といえば、金銀の蒔絵(まきえ)をほどこした正月用の高級なものをイメージする。だが最近は、日々の暮らしに合うデザインで、価格も一万円前後の手ごろなものが増えている。「どんな料理にもあるほか、花を生けたり、インテリアに見立てるなど、用途はアイデア次第。いろいろ活用してみては」と御手洗さんは提案する。
たとえば、ホームパーティーの場合。漆は、クリスタルやガラス、ステンレスやシルバー、白磁の器などとの相性が良い素材で、コーディネートしやすい。特に重箱は高さがあるため、テーブルに華やかさや立体感を演出できる。中の料理が見えるように上下の箱をずらして重ねたり、朱と黒など二色の箱を交互に積み重ねたりしてアレンジすると動きがでる。
平面に美しく並べて組み合わせ皿のように使ったり、銘々の取皿としても便利だ。


普段使いの重箱を提案する御手洗照子さん
(東京都中央区の器の店「日々」)

輪島塗のメーカー「岡垣漆器店」(石川県輪島市)では長箱(ながばこ、長方形の重箱)を製造している。「立食パーティーなどで銘々皿として長箱を持ち歩いても都合がいい。グラスを乗せても安定感がある」
一般的な重箱のサイズは七寸(約二十一センチ角)の小さめが人気だ。越前漆器メーカーの「あたかや」(福井県鯖江市)は、小さくシャープなデザインで、合成塗料による銀と朱色の重箱を手がける。フルーツやスイーツなどを入れても見栄えがいい。御手洗さん宅では、テラスなど屋外でのティータイムにこぶりの重箱が活躍。「気軽に使える重箱を手始めに、漆器の魅力を知ってほしい」「漆器の絵柄や知識について家族や友人に語るのも大事。愛着がわき、次の世代に残そうという気持ちも高まる」と御手洗さん。

花鳥風月や山水など、重箱にあしらわれた絵柄は多彩。若い女性が古い着物の意匠に魅せられるように、重箱や漆器の絵柄に興味を抱く人も増えつつある。伝統の柄はひとつずつ意味がある。それを調べるのも楽しい。

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